田んぼの水路でフナを釣る  1 
                  正しいフナ釣りの主張    
      

 ぼくが釣っているフナは、ヘラブナではありません。マブナです。マブナを、ミミズのエサで釣っています。釣ったマブナは、職場(小学校です)の水槽で飼うか、池に放すか、食べます。

 今、釣りの世界では、マブナよりもヘラブナの方が、圧倒的多数派です。2000年に、水郷・与田浦の畔にある千葉県立大利根博物館で、「フナと釣り」という企画展がありましたが、釣りに関する記事や資料は、多くがヘラブナ釣りのものでした。
 ヘラブナは、琵琶湖原産のゲンゴロウブナを養殖して全国各地に放流したもので、背中が異常にせり上がり、目の位置が不自然に下にある、どう見ても不格好な魚です。ところが、食性が「純植物性」のこの魚を練り餌で寄せて釣る、特殊な釣りにハマる人が増えたために、全国に放流されて広がったのです。最近では、マブナを釣る人も、多くがミミズではなく練り餌(マブナは雑食性なので、どちらでも釣れる)を使うに到りました。ウキも、ヘラブナ釣りと同じような細長いものを使う人が多くなりました。
 ぼくは、あくまでミミズにこだわります。ウキも、小さな玉ウキを2個つけた、「簡易シモリ仕掛け」です。竿の長さは、3.6メートルですが、狭い場所では、2.5メートルほどにします。ぼくが釣るのは小さいフナなので、ハリは2号。これでも、フナの場合、ほとんど飲み込まれることはありません。
 釣ったフナのうち、大きい(15センチ以上)ものは、その場でリリースします。小さいものはエアポンプつきのビニールバケツに入れ、それをさらにクーラーボックスに入れて持ち帰ります。
 持ち帰ったフナの行き先は、釣った場所や数によっても違います。ぼくの職場の小学校には、ぼくが管理する60センチ水槽が2つあり、そのうち1つがフナ用になっています。家で飼いたい子が来れば、いつでも持たせてあげます。裏庭の小さな池(長径5メートルほどの長円)は、小さなビオトープ。そしてもう1つ、学校で整備している教材用の「天然ビオトープ」があるのです。だから、多くのフナは、そのどれかに放されます。
 ときどき、ぼくはフナを食べます。甘辛煮が多いですが、味噌汁に入れたり、開いて干物にもします。フナは、おいしい魚なのです。
 最近、フナを食べる人が少なくなりました。水郷のみやげに甘露煮を買う人はいますが、自分で釣ったフナを料理して食べる人は、ほとんどいないようです。汚いとか、農薬が心配などと言うのでしょうが、ぼくはフフンと笑ってしまいます。そう言う人は、ウナギの蒲焼きは、安全だと思っているのでしょうか? 養殖のブリや、養殖のサケは、どうなのでしょうか?
 現代の生活の中で、有害物質の体内侵入を完全に阻止することは、不可能です。だからぼくは、その摂取量をなるべく減らすように心がけています。だから、ぼくはフナを食べる代わりに、ウナギをはじめ、養殖物の魚は自分では買いません。(出されれば食べますけれど。)他の食品も、なるべく生協から買っています。これでもう、たまにフナ(もちろん、有害物質の蓄積が多い内臓は、きれいに除いています)を食べても、他の人よりもリスクを減らせると思っています。
 フナは、淡水魚の中でも水質汚染に強い魚です。フナこそは、環境破壊に対して果敢に立ち向かう戦士であり、おいしい甘辛煮をぼくたちに提供してくれる殉教者なのです。だからぼくは、彼らのたくましさを称えるとともに、彼らの力を自らの体内に宿すことによって、彼らとともに環境破壊に立ち向かう闘いをすすめる意志を固めなければならないと思うのです。
 ちょっと大げさで自己満足的な、正しいフナ釣りの主張でした。 

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   春の小川でフナを釣る
   http://www.matsuyama-syobou.com/   (まつやま書房へ) 

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2.「思わぬタナゴ」に泳ぐ