田んぼの水路でフナを釣る 3 水は落ちてもフナはいた 埼玉県大利根町 |
埼玉県北部の、利根川に面した北埼玉郡大利根町は、ぼくのフナ釣りの大切なフィールドだ。 大利根町の水路には、上流の利根大堰で取水された水が、埼玉用水を通って流れて来る。用水の水は細かく分かれて田んぼを潤し、田んぼから排水路に落ちて、さらに下流へ流れていく。「落とし」と呼ばれる排水路の水は、かつての利根川や支流の流路をなぞって、東京湾に注いでいる。 大利根町で、ぼくが一番気に入っている釣り場は、「道の駅大利根」のそば。埼玉用水の分流、新元和川用水から来た水が、道の駅の周りのホテイアオイの田んぼ(?)を潤し、狭い水路に落ちてくる。ここから下流500mほどが、ぼくの釣り場。どのくらい狭いかと言うと、上流部は足で軽くまたげてしまうほどの幅なのだ。3面コンクリートの水路で、片側がホテイアオイ、片側が道路になっている。ぼくは、その道路にジムニーを停めて、後ろのドアをあけて釣り支度をする。 ぼくの竿は2.1m。エサはミミズを小さくちぎる。ウキは小さな玉ウキが2つ。ハリは、秋田狐2.5号を使っている。ぼくが秋田大学の出身だということも影響しているが、このハリの形が、飲まれにくくはずしやすく、しかも魚の口にきちんとかかる(と、ぼくは思っている)のだ。もっとも、フナはハリを飲んでしまうことはほとんどない。深くかかって口の外にハリが出ていなくても、少し引っ張ると、ハリがスルリと出てくることがほとんどだ。 この水路は、水が通る5月から8月までがシーズン。深さは60cmほどで、適度な流れがある。この流速は取水・排水量によって決まるので、早すぎて釣りに向かないときもあるのだが、上流と下流で速さが違うので、その時によって釣り場所を変えている。 田んぼが水を落とすと、この水路の水もグンと減るが、下流部ではそれでも30cmほどの深さがあり、水が濁っていれば釣りになる。今年(2004年)は10月と11月に出かけて、シーズン中よりは少なかったものの、それなりの釣果があった。 かわいい小ブナ。現住所はぼくの学校の水槽である。 この水路では、フナとともにタモロコが釣れる。このときは、タモロコのアタリの方がずっと多かった。タモロコは、食べてもそれなりにおいしいが、困ったことに、すぐにハリを飲んでしまうのである。「待ってアワセて、ハリ飲まず」のフナに対して、待っていると、喉の奥までハリを飲んでしまうので、アウト。ごめんねと言いながら開口手術をして、ザリガニのエサになってもらう。ここにはモツゴ(関東方言「クチボソ」)もいるが、モツゴは賑やかなアタリの割りにはあまり飲まないので助かる。 恐怖の「ジャンボタニシ」 何と、11月7日に、同じ大利根町の栗橋寄り、東武日光線の鉄橋が見える素掘り(土)の水路の、農道をくぐるコンクリートの護岸に、ジャンボタニシの卵を発見した。ぼくは農業関係の本も読んでいるので間違いない。稲を食い荒らす害が西日本を中心に報告されている、帰化生物である。びっくりして写真を撮り、埼玉県の農業関係の機関のホームページにメールを送ったのだが、音沙汰がないところを見ると、埼玉県にはすでに生息しているのかもしれない。ぼくは、大利根町、羽生市、加須市、東松山市、吉見町、川島町などをフィールドにしているのだが、今まで一度も見たことがなかったのに。 気色悪いピンク色の、ジャンボタニシの卵。この先どうなるのだろうか。 向こうに東武線の築堤。手前のコンクリート壁に、それがあった。 「水郷」の雰囲気を今も残している埼玉県北部。しかし、環境破壊は生物の分野にまで及んでいる。この日の帰り道、ぼくの心は重かった。 「水辺の環境民俗学」トップにもどる ホームページのトップにもどる 4.「日本最大のタナゴ」に泳ぐ |