「鉄道まちづくり会議」

        行ってきました

    
 2006年11月4日(土)、兵庫県加西市において、「第3回全国鉄道まちづくり会議」が開かれました。
 「鉄道まちづくり会議」は、地方鉄道の経営危機の中で、鉄道交通の復権と、鉄道を軸としたまちづくりをめざして、2004年に第1回を島根県平田市(一畑電鉄の地元)で開催、2005年に第2回を長野県上田市(上田電鉄の地元)で、そして第3回が、北条鉄道の地元・加西市となったものです。
 と言っても、私は「鉄道まちづくり会議」に参加するのは初めてであり、どんな枠組みでどんな人たちが集まるのか、よくわかっていませんでした。でも、私のメンバーのひとりとなっているNPO法人・全国鉄道利用者会議の人たちが関係していて、「どうする?鉄道の未来」という参考書(ほんとに参考になる本)を編集した組織なので、ぜひ参加したいと考えていました。
 そこへ、環境自治体会議環境政策研究所上岡直見さんから、この「まちづくり会議」のお知らせをいただき、すぐに参加を決めた次第です。(私へというより、秋田内陸縦貫鉄道へのお知らせだったのですが。)
 
                          北近畿タンゴ鉄道 丹後神野―甲山

 11月1日(水)の午後にジムニー「はつかり号」で八王子を出発、2日(木)は琵琶湖博物館と琵琶湖での釣り、3日(金)は北近畿タンゴ鉄道の撮影と「コウノトリの郷公園」訪問、播但線の撮影をすませて、加西市の宿泊施設「いこいの村・はりま」に午後5時に到着しました。
 宿舎の部屋にはすでに全国鉄道利用者会議のSさん、Mさん、Iさんが着いていました。福岡県から車で走ってきたそうです。3人とも私は初めてお会いしましたが、すぐに話が弾みました。

 交流会にびっくり
 この夜は、参加者の交流会が6時から。交流会と言えば宴会なので、私は先に風呂に入りました。浴衣でもジャージでもなく、いつものアウトドア・スタイルで会場に行くと、何と、多くの参加者は背広姿。これは宴会ではなく、セレモニーの雰囲気。同室の3人も背広です。でも、持ってきていないのは仕方がないので、開き直って、決められた席に座りました。参加者は40人ほど。利用者会議メンバーの福井のSさん、横浜のHさんがいて、笑顔で再会のあいさつ。私は上岡直見さんの斜め前で、上岡さんの著書「鉄道は地球を救う」以来のファンである私は感激して自己紹介しました。その上岡さんが「まちづくり会議」の事務局を務めていると知り、またびっくり。
 会のはじめに、加西市の中川暢三市長(北条鉄道社長)があいさつ。中川市長は私より少し年下ですが、積極的な姿勢で経営改革を進めたという報告に、またまたびっくり。
 加西市長の次は、鉄道まちづくり会議の会長を務める福井県勝山市の山岸正裕市長のあいさつ。勝山市は旧・京福電鉄の運行停止と、えちぜん鉄道の誕生というドラマチックな経験をした地元。山岸市長は、鉄道の復活に尽力した方です。
 この交流会には、国土交通省鉄道局の課長(翌日の講演者)や、いすみ鉄道の部長、わかやま電鉄の専務などの鉄道関係者や、研究者、また、鹿島鉄道など地域の鉄道の支援をしている人たちが参加していて、しだいにあちこちで名刺交換と歓談がにぎやかになりました。私もあちこちで名刺を交換しました。
 司会の上岡さんから発言を求められた私は、秋田内陸縦貫鉄道の紹介と現状を、少し気合を入れて話しました。
 交流会は3時間近く続き、盛会のうちに終了。この日、午前5時過ぎから活動していた私は、もう眠くなってしまって、早々と眠りにつきました。

 早起きは「三本の得」
 4日朝、目が覚めたのは5時半ごろ。まだぐっすり寝入っている同室の3人を残して、私は身支度をして車に乗り込みました。朝の北条鉄道の「取材」です。霧の道を、地図を頼りに走って、踏切へ。そして、駅を探すと、ありました、古い駅舎の長(おさ)駅。
 霧が晴れないので、車を駅に置いて列車に乗ることにしました。20分ほど待って、粟生(あお)へ向かう上り列車がやって来たのですが、乗ってびっくり。三連休中の土曜日なのに、1両だけの座席は高校生で埋まっています。立っている生徒もいます。
 長駅からも3人の高校生が乗り込みました。私は運転士横のかぶりつきを確保して、霧の中から現れてくるレールを眺めていたのですが、次の駅でまたびっくり。20人ほどの高校生がホームで列車を待っています。そしてその次の駅でも10人ほどが……。終点の粟生に着くときには、車内はぎっしり。でも、私の心もうれしさでぎっしり詰まっていました。
 粟生駅で続々と降りた高校生たちは、跨線橋を渡って、JR加古川線ではなく、神戸電鉄のホームに向かいます。やがて神戸電鉄の電車が入ってきて、高校生たちが乗り込みました。

 昔ながらのたたずまいの長駅。

 待合室にはまちづくり会議のポスターと、ボランティア駅長の紹介が貼られていた。

 粟生行きの列車がやって来た。


 車内はすでに高校生で賑わっていた。みんな勉強中。



 どの駅でも高校生たちが待っていた。

 「まちづくり会議」のヘッドマークがつけられていました。

 北条町行きはロングシートだけが目立つ。

 朝もやの中の「はつかり号」。

 北条鉄道の運転士さんに聞いたら、この列車は平日は2両だが、きょうは土曜日なので1両だとのこと。高校生が向かったのは小野高校で、「きょうは模擬試験があるとか言ってたな」とのことでした。そういえば、多くの高校生が列車の中で参考書を開いていました。
 粟生駅で少し待って、折り返しの北条町となったディーゼルカーに乗って、車の置いてある長駅まで戻ります。こんどはガラガラ。この車両は「フラワ2000−2」という、2001年に運転開始された鉄道車両タイプのしっかりした造り。サイズも当初のレールバスより大きいので、空いたロングシートがずいぶん長く見えます。
 運転士さんにあいさつして長駅で降り、今度は車で撮影場所を探し、北条町から戻ってくる列車を待ちます。霧が少しずつ晴れて、「靄(もや)」の雰囲気になってきました。朝日がもやの向こうにぼんやりと見えます。警報機が鳴り、軽い響きとともに列車が走ってきました。
 「早起きは3本の得!」
 私は笑顔で朝の空気を吸い、宿舎への道をたどったのでした。
 
                             光の中へ、北条鉄道は走る。

                         
「まちづくり会議」
 宿で朝食をすませて、いよいよ会場の加西市健康福祉会館へ。ここで利用者会議のTさんとも会いました。
 オープニングにハープの演奏があり、午前10時に開会。加西市の中川市長、勝山市の山岸市長があいさつし、来賓として兵庫県、日本民営鉄道協会からもあいさつがありました。
 基調講演は、まず、国土交通省鉄道局財務課長の櫻井俊樹さん。地方鉄道に対する行政としての支援について、例を挙げながらのお話でした。
 次に、和歌山大学助教授の辻本勝久さんが、南海電鉄貴志川線から新会社「わかやま電鉄」へのケースを織り交ぜながら、地域の人たちや行政の鉄道支援の取り組みについて講演しました。
 午前中にもう一つ。「バイオディーゼル大集合」と題して、菜種油や食用廃油を原料としたバイオディーゼル燃料を鉄道車両に使う取り組みをすすめている会社や地域からの報告がありました。実は、上岡さんから私に、秋田内陸縦貫鉄道もバイオディーゼルのとりくみを考えているのだったらぜひここで報告してもらいたいというお話があったのです。でも、内陸線については、まだ構想の段階ですし、会社もちょうど忙しい時期に当たっていたので、今回は不参加となりました。
 結局今回は、千葉のいすみ鉄道と、地元加西市役所の担当者が現在までの取り組みを報告するにとどまりました。来年はぜひ内陸線も報告できればと思います。
 いすみ鉄道へは私も今年8月に出かけて、大多喜町役場でお話をうかがい、資料をもらってきました。ここでの報告はいすみ鉄道の川上部長が行いました。いすみ鉄道では環境対策に取り組む大多喜町と連携して、昨年12月に、バイオディーゼル燃料を5%混合した軽油でテストを行っており、そのデータが報告されました。また、加西市からは、地域ぐるみでバイオディーゼル燃料の供給に取り組むべく、取り組みをすすめており、100%バイオ燃料で列車を走らせることを目ざしているそうです。
 

             ここが会場です。

 ロビーには北条鉄道の紹介パネルが。

 昼食休憩のときにそばを打つ地元の人。

        イメージソングの発表。

 和歌山電鉄の磯野専務の報告です。

      とても充実した会議でした。

 午後は、北条鉄道イメージソングの発表会(なかなかいい曲だと思った)のあと、北条鉄道の取り組みが紹介されました。報告者は、北条鉄道の運転士さん、社外から就任した取締役の女性、公募の「ボランティア駅長」さんたち(積極的なサポーターという立場)。
 この1年ほどの間に、北条鉄道は大きく変貌したとのこと。これは中川市長の強力(強烈?)なイニシアティブによるものだそうです。それにしても、すごい!と思いました。
 さらに、長野県の上田電鉄と地域の取り組みについて、古平浩さん(東北大学大学院)の報告、和歌山電鉄専務の磯野省吾さん(岡山電気軌道)の報告があり、地域と密着した鉄道のありかたのモデルケースに触れることができました。
 会議の最後は、講演者、報告者によるパネルディスカッションがあり、鉄道と地域の再生に向けて参加者がそれぞれの地域でがんばることを確認して終了しました。

 今回の「まちづくり会議」に参加して、地域の人たちが鉄道、そしてこの会議を支えていることが強く感じられました。会議の昼食時には弁当やそば、まんじゅうなどの軽食が手作りで用意され、地元産品のコーナーも設置されていました。
 会議の会場での参加者は100人を越えるくらいでしたが、合唱団や様々なスタッフを加えると、200人を十分に越えたのではないかと思います。さらに、別会場ではミニSLの運転などの関連したイベントが開かれ、会議よりずっと多い地元の参加者があったそうです。
 加西市と北条鉄道の関係者の皆さん、ありがとうございました。そしてがんばってください。参加者の皆さん、これからもよろしくお願いします。私もがんばって活動を進めます。

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