東北の渓のザッコ釣り 8 ブナハリタケを採った! |
これが東北を代表するキノコ、ブナハリタケ。 10月9日(土)朝、ぼくとUさんは新幹線「こまち1号」の車内にいた。 もう渓は禁漁になっている。この日、ぼくたちは東北の秋の山にキノコ狩りに出かけたのだ。行き先はぼくがサポーターをしている秋田内陸縦貫鉄道のシンボル、森吉山である。 「こまち1号」のスピードに、いつも「青春18きっぷ」で旅をしているUさんはびっくり。しきりに「速いなあ」を連発していたが、盛岡から田沢湖線に入って、落ち着いた様子。 田沢湖駅のホームにSさん夫婦の姿が見えた。1日早く旅に出て、田沢湖などを巡っていたのだ。これで一行4人がそろった。 角館で買出しをする。11時発の鷹巣行きは、20人ほどの乗客。観光客が多いのはうれしい。運転士は庄司さん。いつもながらの観光案内に乗客も笑顔。沿線はもちろんまだ紅葉には早いのだが、「この次来るときは…」と思わせてしまう。 阿仁合駅で降り、きょうの泊まりの「ぶなホテル」からの迎えの車に乗って、山の中へ。ホテルはゴンドラ乗り場の近くにあり、鉄道利用だと送迎は必須。 宿に着いて荷物を降ろし、キノコ狩りの準備。玄関の前では、樽いっぱいの塩蔵ブナハリタケを水にさらしてもどしていた。「これが採れるといいねえ」と、樽端会議。 大量のブナハリタケを見つめるSさんの目は真剣だった。 宿の車でゴンドラの乗り場まで送ってもらう。帰りは登山道を歩いてくると言うと、4時過ぎになったら途中まで車で迎えに来てくれるとのことで、ありがたい。 森吉山の阿仁ゴンドラは、長さ3.5kmを15分ほどかけて、標高1,167m地点まで運んでくれる。ここがブナ帯と針葉樹林帯の境目なので、ぼくたちはここから登山道を下りながらキノコを探すという作戦なのである。 ゴンドラから見た黄葉のブナ林。白い幹が印象的だが、その手前はゲレンデなのである。 ゴンドラを降りたぼくたちは、他の人たちと逆に、潅木帯を下る。足元に高山植物を見つけて喜ぶUさん。もっとも、もう花の時期ではなく、秋の花のリンドウも、つぼみばかりだったが。 しばらく降りるとブナの林になり、キノコも少しずつ顔を出した。一同の目は登山道の足元ではなく林の中に向けられた。 きれいな色のドクベニタケ。 ちょっと古くなったナラタケ。「十分食べられる」とUさん。 俄然にぎやかになったのは、登山道の横の倒木に、下の写真のキノコの一団を発見したとき。SさんもUさんも「エノキタケだ」と判断したが、「この時期に出ているのはおかしい。冬のキノコなのに……」と、一抹の不安。さんざん議論した末に、「疑わしきは採らず」という原則に従って、そのままにしておくことになった。 これが「エノキタケ」? 市販の「もやし」のような姿とは似ても似つかないのが天然もの。 秋のブナ林を下る。 突然、後ろの林の中から歓声が上がった。 「ブナハリだ!」 Sさんの声である。 「たくさんあるぞ!」の声に、ぼくは「写真! 写真!」と叫んで林の中に突入した。ほんとうに、ブナの倒木にびっしりと、さっき宿で見たばっかりの、ちょうど採りごろのブナハリタケ(地元では「ブナカノカ」と呼んでいる)がついていたのである。4人は満面の笑顔で収穫にいそしんだ。もう、これだけでも、来た甲斐があったというものだ。 みごとなブナハリタケ。ここに写っているのはほんの一部。 石突をナイフで切り取ると、きれいに収穫できる。 ぼくはキノコの目利きはあまりできない。しかも慎重派である。SさんとUさんはキノコ歴20年のベテランである。だが、この2人の判定が分かれることも少なくない。そのときはぼくの出番。「判断が分かれたときは、採らない」と宣言する。これならぼくにもできるのである。 ぼくにも判断できるキノコは、もちろんある。たとえば、立派なシイタケやムキタケとよく似ている毒キノコのツキヨタケ。これは、割ってみると、石突の部分に黒いしみがあるので区別できる。そもそも、道端にこんな立派なシイタケが採られずに生えているはずがない。 おいしそうなツキヨタケ。よく見ると柄の出方もシイタケとは違う。 この黒い「しみ」がツキヨタケの目印。 さて、この日の最大の目的は、採りたてキノコをいっぱい入れた、きのこ汁。ブナハリタケ以外の何種類かのキノコをコッヘルに入れて、煮立たせてから味噌を入れる。キノコしか入っていない「きのこ汁」なんて、初めて。もう、最高の「おやつ」だった。 小さな流れでキノコを洗うSさんとUさん。 おいしい「きのこ汁」ができました。 「奥会津は萌黄から新緑へ」に跳ねる 「東北の渓のザッコ釣り」のトップにもどる ホームページのトップにもどる |